急性の痛みでは、安静にして痛めたところに無用な負荷をかけないようにする必要があります。
腰痛でも特異的腰痛と言って原因のはっきりしているものの場合は、その原因に則った適切な治療を受ける必要があります。
適切な指導を適切に受けられる機関に相談することをお勧めします。
しかし、これとは違い慢性化した腰痛の場合は過度に安静にすることはかえって状態を悪化させることもあります。
とはいうものの、それではどのように動いたら良いのか? どんな運動をすべきか? という疑問が出てきます。
慢性化した腰痛の特徴を簡単にまとめて、その上で必要な運動についてお伝えします。
腰痛が慢性化した身体の状態
腰痛の場合、慢性化した状態とは、痛くなってから3ヶ月以上経過したもののことを言います。
私たちにとって、痛みのあるところの力を抜くことは容易ではありまん。
痛みのある場所に力を込めて、痛みに対して防御的な反応をします。
これは皆さんが経験した事実と同じだと思います。
体の中心に向かって力が入ります。
痛い時の表情は特徴的ですね。
痛みのある場所では、筋肉は常に緊張し力が入った状態が持続しています。
通常私たちは、筋肉に力を入れたり抜いたりしています。
また常に血流が酸素や栄養素を運び、老廃物を持ち去ってくれています。
ところが常に力が入って、緊張状態が持続している箇所では、血流が乏しくなります。
酸素や栄養素が運ばれにくくなった上に老廃物もその場所に留まりやすくなります。
皮膚の表面にはっきり分かるほどに筋肉が収縮して隆起している場合もあります。
このような状態では筋肉は通常の滑らかな収縮が行えません。
また痛みの局所の周りには通常よりも緩んでしまった筋肉が見られることもあります。
いずれにしても、正常な機能が損なわれてしまっている状態です。
腰痛が慢性化した心の状態
腰痛が慢性化した人の心の中では、一体何が起こっているのでしょうか?
簡単に言ってしまうと、痛みに対して直ぐに反応できる状態が常に準備されているということです。
「一体いつまでこの痛みは続くんだろう?」「このまま治らないのかもしれない。」「仕事ができなくなったらどうしよう。」
心の中では常にたくさんのネガティブな言葉が繰り返されています。
長く続くと鬱状態にもなりかねません。
またこのような状態は、痛みのある場所から入ってくる情報に過剰反応するようになっています。
さらには、過剰に反応するばかりではなく、本来はない痛みの情報を脳が作り出してしまうことさえもあります。
このような心の状態は、体の緊張状態をより一層強めてしまいます。
腰痛が慢性化した身体と心の負の循環です。
負の循環によって結びついてしまった身体と心の相互作用はなかなか断ち切れなくなっています。
動作や考え方が腰痛と手を組んでしまったのです。
どのように動き始めるか?
さてそれではどこから始めるべきか?
まず姿勢です。
痛みを感じない、もしくは最も少ない楽な姿勢で運動を始めます。
良い姿勢も悪い姿勢もありません。
ある運動や動作を行う際に、それを行いやすい姿勢と行いにくい姿勢はあります。
有利な姿勢と不利な姿勢があります。
でも良い姿勢と悪い姿勢はありません。
姿勢にとって、良い悪いを考えたり前提したりすることは、意味を持たないどころか有害でさえあると思います。
このことについてはまた別の機会に詳しくお伝えします。
気をつけなくてはいけないことは、運動を行うことで新たな痛みを作り出さないことです。
運動は痛みのある場所から最も遠い場所を、ゆっくり動かすことから始めます。
腰から最も遠い、意図して動かせる場所は額もしくは手または足の指です。
足の指を使うと、運動や動作で腰と結びついて活動するパターンが多いので、最初は使いません。
手の指または額や目を動かすことから始めます。
体の動きが腰の痛みを生み出さないことを確認します。
脳が鳴らしている警報を小さくするには有効です。
動きは小さくゆっくりから始めます。
ゆっくりのまま運動範囲を少しずつ大きくしていきます。
指・手首から始めて少しずつ前腕・肘へ。
痛みのある場所やその周辺の緊張が高くならないように観察しながら進めます。
どのような運動が必要か?
「腰痛体操」を推奨する方もいます。
ストレッチを指導する方もいます。
腰痛は、筋肉の弱化によって腰への負担を増やしてしまうので、筋肉をつけましょう、と言う方もいます。
硬くなっている筋肉を伸びやすくして、弱くなった筋肉を強化して、腰への負担を少しでも和らげようというものです。
それではどれがあなたに必要なのでしょうか?
そしてどのような順序で行えば良いでしょうか?
腰痛に限ったことではありませんが、すべての人の顔が違うようにすべての腰痛が違います。
全ての方に共通して有効な方法はないと思います。
ある人にとって有効な運動が、別の人にとっては痛みを強めてしまうこともあります。
舌の運動から始めることが有効な人もいれば、呼吸法によって痛みが楽になる人もいます。
繰り返しになりますが、運動を行うことで痛みを与えないことが何にも増して大事です。
運動そのものの有効性に根拠があることはとても大切なことです。
しかし、その有効性に根拠があることと、その有効性のある運動が自分に適応するかは別のことです。
原因がみな違い、置かれている状況がみな違うからです。
それでは何から始めるか?
痛みをひどくさせてしまう人に共通しているのは、自分の体から出ているサインに気づかないか、無視しているということです。
特殊なケースや外傷を除けば、痛みが突然出現することはありまん。
何らかのサインが痛みがひどくなる前に出ている筈です。
心当たりはありませんか?
そのサインに気づかないか、あるいは大したことはないと無視してしまうか、のどちらかです。
このような特徴や習慣を持つ人は、ここから変えていくことが結局は近道です。
一時的に良くなっても、この特徴と習慣のために再び痛みが訪れるでしょう。
出ていたサインに気づかなかったあなたは、自分の体への興味をもう少し持った方が良いでしょう。
無視していたあなたは、自分の体と話し合うことをお勧めします。
害がなく、初めの試みとしてお勧めできる方法の内の一つを紹介します。
全身フォーカスオン!
仰向けに寝転んでなるべく力を抜きます。
呼吸は全て鼻から吸い鼻から出します。
5つ数える間吸い、5つ数える間吐きます。
これを5回。
次に4つ数える間吸って、そのまま7つ数える間息を止めて、8つ数える間吐きます。
これを5回。
どれも無理をせずに、きついと感じたら数をそれぞれ少なくしてください。
自然な呼吸のリズムに戻しましょう。
あなたの体と床が接している場所に注目しましょう。
足の先からお尻へ、片足ずつ。
手の先から肩へ、片腕ずつ。
お尻から背骨に沿って頭へ。
ゆっくり。
これらの過程の中で、ある部分がひどく重く感じられたり、冷たく感じられたり、力が入っているように感じられたり、ということはありませんか?
もし見つかったら、その部分を緩めてみましょう。
あなた自身があなたの体に緩む許可を与えてください。
1回で見つからない場合は数回行ってみてください。
きっと見つかります。
全身フォーカスオン!を終わるときははじめの2種類の呼吸を行なってから終わることをお勧めします。
この呼吸を行なっている時に気づく人もいます。
自分の体との会話の始まりです。
まずはここから始めてみましょう。
まとめ
腰痛があれば、とにかく安静が第一と思っているあなたは考え方の変化がまず必要です。
体を動かすことで痛みの解消を図る方法もあります。
しかし、誰にでも有効な方法はないので、痛みを起こす前のあなたの状態に注目してみましょう。
体から出ていたサインを見逃したり無視したりしていませんでしたか?
もしそうならば、あなたの体に興味を持って、あなたの体と話すことから始めてみましょう。
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