疲労には脳とつながる腸内細菌が関係し、それは食事内容で変化する

日常的に私たちが使う「疲れ」という言葉ですが、指している先がいくつかあります。

肉体的な疲労の場合、精神的な疲労の場合、両方が混在している場合。

疲労に関してはこれまで科学的な解明が進んでいなかったようですが、現在の社会状況を反映して疲労について様々な研究成果が上がってきているようです。

疲労の原因となる物質の特定や疲労を感じる仕組みの解明などの成果が上がっています。

ところでちょっと古いですが、1999年厚生労働省(旧厚生省)の疲労研究班が疲労の実態調査を行なっています。

その結果、国民の1/3の人々が半年以上続く慢性的な疲労を感じており、その大半は明らかな病因が見つからないことが明らかになりました。

原因不明の激しい疲労感が続く慢性疲労症候群(CFS)と呼ばれる病態も、就労可能人口の0.3%に認められているそうです。

さらに、慢性疲労全体によって引き起こされる日本における経済損失も甚大です。

文部科学省疲労研究班が算出したところ、年間約1.2兆円に及ぶことが判明したそうです。

慢性的な疲労は医学的な観点のみならず経済的損失という観点からも大きな社会問題であることが明らかになってきています。

このように個人的なレベルでも社会的なレベルでも大きな問題となっている疲労ですが、疲労に対抗する手段も様々な提案がされるようになってきています。

疲労とは何か?

そもそも「疲労」とは何でしょうか?

人それぞれの疲労に対するイメージがあると思います。

疲労については以下のように日本疲労学会によって定義されていますのでご参照ください。

疲労とは過度の肉体的および精神的活動、または疾病によって生じた独特の不快感と休養の願望を伴う身体の活動能力の減退状態である。疲労は「疲労」と「疲労感」とに区別して用いられることがあり、「疲労」は心身への過負荷により生じた活動能力の低下を言い、「疲労感」は疲労が存在することを自覚する感覚で、多くの場合不快感と活動意欲の低下が認められる。様々な疾病の際にみられる全身倦怠感、だるさ、脱力感は「疲労感」とほぼ同義に用いられている。(日本疲労学会平成 22 年発表)

どうでしょうか?

ご自身のイメージと一致していましたか?

このように定義される疲労ですが、それではその原因は一体どこにあるのでしょうか?

食べたものが与える影響

疲労の原因については様々なことが言われています。

中枢説や末梢説がありますが今回はその他の要因について述べます。

マイクロバイオータをご存知でしょうか?

これは私たちの体の腸内や皮膚、口腔などで共生している膨大な数の微生物の総称です。

細菌叢や微生物叢、マイクロフローラとも言われます。

腸内のマイクロバイオータは特に腸内細菌叢と呼ばれています。

マイクロバイオームはゲノム全体としての総称であり、マイクロバイオータとは区別されます。

様々な病気や症状の原因が解明され、マイクロバイオータが私たちの健康に重要な役割を果たしていることがわかってきています。

私たちと共生関係にあるマイクロバイオータは、私たちの健康に影響を与え続けています。

しかし私たちの食事の習慣や生活習慣の変化が、マイクロバイオータそのものの健康を脅かし、数十万年の共生関係を崩してしまいつつあります。

善玉・悪玉・日和見
善玉・悪玉・日和見

大腸内にいる細菌には、多くの働きがあります。

代表的なものは、人には消化できない食物繊維を化学的に分解して、腸が吸収できる化合物に変えることです。

これらの化合物の一部は私たちの健康にとって欠かせないものです。

特に短鎖脂肪酸と呼ばれる分子は私たちの栄養となります。

ところが高度に加工され、高カロリーで工業生産された「食べ物のような物質を私たちは大量に消費するようになった。

このことは私たちに健康をもたらす腸内細菌を飢えさせることになってしまっています。

 

ヒトの腸内細菌は、善玉の菌と悪玉の菌、そのどちらでもない中間の菌と、大きく分けて3グループで構成されています。

これらの菌は互いに密接な関係を持ち、複雑にバランスをとっています。

腸内細菌の中で一番数が多い菌は中間の菌で、次に善玉菌が多く、悪玉菌は少数です。

中間の菌は日和見菌とも呼ばれています。

これらの菌の理想的なバランスは日和見7:善玉2:悪玉1とされています。

善玉菌が優位に活動していれば日和見菌は善玉菌の味方になっています。

しかし、悪玉菌が優位となると日和見菌は悪玉菌の味方をするようになり、宿主である人体にとって腸内の環境は悪い方へ傾いてしまいます。

マイクロバイオータが作り出す有毒な老廃物は、宿主である人体に悪影響を与え、病気を作り出すこともあるようです。

まさにこれはバランスの問題なのです。

私たちが食べ物として選択しているものが、腸内のどのマイクロバイオータを潤しているのかによって結果が変わります。

脳と腸は相互に関係している

マイクロバイオータがつくる化合物には、脳腸軸と呼ばれる一種の情報通信網を通して中枢神経系と直接つながっているものもあります。

と腸は大規模なニューロン網、化学物質、ホルモンの連絡路でつながっています。

(ニューロンについてはこちらを参照してください)

(ホルモンについてはこちらが参考になります)

脳と腸の状態を常に更新して相互にたえずフィードバックしています。

腸の神経系は第2の脳だと言われます。

消化を見守るだけにしては少々複雑なこの神経系は脊髄と同等にニューロンが密集しています。

腸は脳腸軸を使って腸の状態を脳に送っています。

しかし見方を変えれば、この伝える情報により腸は脳の関わり方をコントロールしているとも言えます。

脳が腸内のマイクロバイオータを認識しているだけではなく、マイクロバイオータの影響が腸内だけにとどまらず脳にまで及ぶことが明らかになりつつあるようです。

その一つにマイクロバイオータがセロトニンの体内濃度に与えるということです。

セロトニンについてはこちらを参照してください)

セロトニンはしあわせホルモンとも呼ばれる脳内ホルモンで、ノルアドレナリンやドーパミンと並んで、感情や精神面、睡眠など人間の大切な機能に深く関係する神経伝達物質の1つです。

脳は緊張やストレスを感じるとセロトニンを分泌し、ノルアドレナリンやドーパミンの働きを制御します。

セロトニンの分泌により自律神経のバランスを整えようとするのです」。

しかし、ストレスや疲労が溜まると、セロトニンの分泌量が減ったり、働きが制限されたりしてしまいます。

疲労にとって重要なファクターとなるセロトニンの分泌にマイクロバイオータが関与しているとすれば、腸内環境への配慮が大切であることはわかっていただけると思います。

有益なマイクロバイオータとの共生関係

私たちにとって有益にも不利益にも働く私たちの内部の住人を左右する最大の要因は食事です。

ここで提案する食事は、マイクロバイオータの多様性を高め、作り出す短鎖脂肪酸を増やすことが目的です。

短鎖脂肪酸は脂肪酸の一部で、炭素数6以下のもので、具体的には酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、イソ吉草酸、吉草酸、カプロン酸、乳酸、コハク酸を指す。但し、乳酸、コハク酸は短鎖脂肪酸に含めないとする見解もあるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/短鎖脂肪酸

食べ物を選択すればマイクロバイオータを効果的に改善できます。

マイクロバイオータの反応は長期にしろ短期にしろ食事の変化次第で良くも悪くもなります。

食事内容での留意点はいくつかあります。

食物繊維を多く摂ること。

 

 

肉の摂取量を減らすこと。

飽和脂肪酸の摂取量を減らすこと。

飽和脂肪酸(ほうわしぼうさん)とは、炭素鎖に二重結合あるいは三重結合を有しない(水素で飽和されている)脂肪酸のことである。飽和脂肪酸は同じ炭素数の不飽和脂肪酸に比べて、高い融点を示す。肉、牛乳、バター、卵黄、チョコレート、ココアバター、ココナッツ、パーム油などに多い。世界保健機関(WHO)による2016年のレビューでは、多量の飽和脂肪酸の摂取は心血管疾患のリスクを高めるとする。https://ja.wikipedia.org/wiki/飽和脂肪酸

有用菌(プロバイオティクス)の摂取を心がけること。

プロバイオティクス(Probiotics)とは、人体に良い影響を与える微生物(善玉菌)、または、それらを含む製品、食品のこと。https://ja.wikipedia.org/wiki/プロバイオティクス

有用菌はたくさんの種類があるので、自分に合った有用菌を見つける必要がある。

これにはいくつかの有用菌を実際に試して結果を見れば、何が自分にとって有用かわかる。

まとめ

脳と腸(脳腸軸)との関係から疲労に関係するセロトニンの分泌にマイクロバイオータが関わっていることをご紹介しました。

毎日必ず摂る食事の内容が私たちの日々のパフォーマンス影響する疲労に関係しているようです。

普段の食事を見直し、回復力のある若々しい状態で日々の活動を実りあるものにしたいですね。

マイクロバイオータは免疫系にも深く関与しています。

これについては別の記事でご紹介します。

 

■こちらの記事も参考にしてください!

>>【なかなか取れない慢性疲労の解消には何が必要か?何が足りないのか?

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でスタジオーまるじんをフォローしよう!