ハッキリ分からなかった「疲れる」の理由がハッキリしてきた。「疲労」の場所は脳だった。

私たちの生活は、ますます便利になる一方で、様々な問題が私たちの健康を脅かしています。

「疲労」は3大生体アラームのひとつで、「休め」を命じる重要な信号です。

疲労は活動により生じる活性酸素自律神経の中枢に影響することが原因であることが分かってきました。

紫外線いびきも「疲労」を生じさせていることも分かってきています

疲労とは一体なんでしょうか?

あなたは「疲労」とは?と聞かれて説明できますか?

そう言われると、「疲れた」と口することは多いけれど、「疲労」について説明しようとすると結構難しいですよね。

それも無理のないことで、長い間「疲労」を科学的に説明できない状態だったようです。

はっきり分かっていないとキチンとした対処もできません。

それで場当たり的なその場しのぎの対処方法が世の中にたくさん溢れることになってしまったのですね。

疲労は多くの動物が感じている生理現象です。

痛みや発熱とともに3大生体アラームと呼ばれ、「これ以上運動や仕事などの作業を続けると体に害が及びますよ」という大切な防御シグナルのひとつです。

疲れることによって、攻撃能も防御能も低下してしまうことから、野生で生きる動物は本能的にそれを避けようとします。

野生で生きる動物にとっては、疲労とは生死に関わる問題です。

人間も、疲労時には「疲れた」と自覚します。

疲労は、人間が生命を維持するために身体の状態や機能を一定に保とうとするホメオスタシス(恒常性)のひとつとして、それ以上の活動を制限する生体アラームとしての機能を持っています。

しかし、「疲労」は、「痛み」のようなはっきりとした危険を感じにくいことや、「発熱」のように客観的に評価する尺度がなかったことなどから、自身の「疲労」に危機感を持つ人が多いとはいえませんでした。

また、医学的な研究の開始も1990年代と浅く、研究結果の積み重ねもまだまだ少ないようです。

私たちの身体が自分の身体能力(あるいは精神能力)の限界を超えて活動してしまいそうな危険を事前に察知して活動を制限させるために「疲労」はあります。

疲労感や倦怠感といった不快な症状を顕し、『休め』を命じるとても重要な生体アラームが「疲労」だということがわかってきています。

疲労の定義

様々な人が考える「疲労」がそれぞれ違っていると話しがとてもややこしくなってしまいます。

そこで日本疲労学会では、「疲労とは過度の肉体的および精神的活動、または疾病によって生じた独特の不快感と休養の願望を伴う身体の活動能力の減退状態である」と定義しています。

つまり疲労は、心身への過負荷により生じた活動能力が低下している状態のことを言います。

思考能力の低下や、刺激に対する反応の低下、注意力の低下、注意散漫、動作緩慢、行動量の低下、眼のかすみ、頭痛、肩こり、腰痛などがみられます。

これらが起こることにより、「疲労」が人間の活動を「休む」方向へ誘導しているともいえます。

 

どうですか?

「疲労」の受け止め方が変わりませんか?

疲労にも種類があります

疲労には、肉体疲労と精神疲労があり、肉体疲労の回復には休息や睡眠が、精神疲労の回復にはリラクゼーションや気分転換が効果的といえます。

このような形で回復できるものは生理的な疲労といえます。

しかし、休息をとっても回復しない疲労(病的な疲労)があります。

「やる気がない」とか「気合いが足りない」などとかく精神論が幅を利かせていた「疲労」ですが、そのような判断はかえって危険ですね。

様々な疾患が原因となっている疲労や最近になってようやくそのメカニズムが分かってきた慢性疲労症候群という病気もあります。

病的な疲労が疑われる場合は、自己判断で栄養ドリンクやサプリメントなどによる一時しのぎはやめて、専門医(慢性疲労症候群を診断できる専門医はまだ少ないようです)を受診することが大切です。

疲労は脳で感じている

激しい運動をした時に使っているのは筋肉です。

しかし、これを「疲労」と感じているのは、脳です。

疲労は脳で感じるもので、肉体疲労でも精神疲労でも、すべてにが働いて疲弊している状態であることが最近になってわかってきました。

身体からの信号が脳に送られていることは、疲れている人の脳の血流の増加を調べた結果からもわかってきているようです。

人の活動が過度になると、意欲や情動に関わる部分が活発に働き始めます

この部分が、脳の新規学習計画や集中・注意といった脳機能を担当している部分に「休みなさい」という警告を発していると考えられています。

疲労の原因はなんだろう

自律神経交感神経と副交感神経があります)の中枢部では、身体の器官や組織の調節を行い、絶えず生命維持のための身体機能を一定に保っています。

運動(労作)時には、運動の強さや体調に応じて呼吸や心拍、体温などの機能の調節を行っており、身体へかかる負荷に合わせて生体機能のコントロールを行う自律神経の中枢も働き続けます。

体にかかる負荷が大きくなるほど、自律神経の中枢にかかる負荷も大きくなり、自律神経の中枢がある脳がダメージを受けることで疲労が起こるとされています。

これらはもちろん精神的な活動でも同様です。

つまり、頭を使っても体を使っても、疲れるのはどちらも脳の自律神経の中枢だったということです。

動物に過労死はありません。

疲労感は生体を防御するためのものですから、疲れたら休むのが基本です。

しかし脳がとても発達した人間においては、ある種の興奮物質が達成感を生み、疲れていても疲労感を持つことができなくなっている場合があります。

仕事に充実感を持っている人や強迫的になっている人はこうした現象が起こりやすいようです。

生真面目な日本人気質でしょうか。

また、疲労を細胞代謝の側面から捉えると、疲労因子として活性酸素(酸素ラジカル)が考えられています。

活性酸素は、強力な酸化作用をもってウイルスなどを攻撃するのですが、この作用は、皆さんもご存知のように私たち人間の細胞をも破壊してしまう両刃の剣です。

細胞が酸化してしまうとその機能は低下しますが、通常は活性酸素から細胞を守るシステムが働きます。

しかし何らかの理由で処理しきれないほどの活性酸素が産生すると、細胞を修復することができず機能不全に陥ってしまいます。

必然的に体のパフォーマンスが低下します。

すなわち疲労につながるのです。

中枢神経の活動やエネルギー産生のための呼吸など、生命活動を行う中で身体では多くの活性酸素が産生されます。

細胞が若く健全な状態であれば、抗酸化物質が有効に働いて作用し、活性酸素を速やかに処理します。

ところが老化状態や慢性疲労・過労などでは、体内還元物質(抗酸化物質)の作用が低下し、十分に活性酸素を除去できないために酸化タンパク質や過酸化脂質が増え、細胞内の情報伝達、遺伝子の発現、細胞膜や種々の細胞内膜機能が衰え、疲労や疲労感が増してくると考えられています。

酸素が多く消費される活動では、活性酸素も多量に発生します。

活性酸素が発生すると、活性酸素を分解して体内から除去する抗酸化酵素が働くようになっていますが、発生する活性酸素の量が抗酸化酵素の働きを上回ると自律神経の細胞や筋肉が活性酸素によって攻撃されて疲労へとつながります。

紫外線と疲労

実は、紫外線が疲労と関係していることが最近の研究でわかってきており、それは「眼」が媒介役を果たしていました。

皮膚などの体表組織だけでなく眼も紫外線情報を感知し、三叉神経や視神経を介して脳免疫統合系を作動させ、皮膚(表)、消化管(裏)、免疫系(内部)などを制御していることがわかってきました。

この機構が、疲労とも深く関わっています。

紫外線(UV)にはいくつかの種類がありますが、疲労に関係しているのはUVAとUVBです。

眼から身体内に入り込んだUVBは三叉神経を介して、UVAは視神経(網膜)を介して視床下部に信号を送り、脳下垂体を刺激します。

このとき脳下垂体はメラノサイト刺激ホルモン(MSH)や副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)など種々のホルモンを産生分泌し、これらのホルモンを介して、肌や内臓の黒化や、疲労状態が惹き起されます。

内容からすると、紫外線だけでなく問題視されているブルーライトも影響しそうですが、今回調べた範囲内でははっきりとした記述はありませんでした。

睡眠時の呼吸の仕方にも疲れの原因があった運動以外で呼吸が乱れる場面としては、いびきをかいて寝ている時が考えられます。

いびきは、気道が狭小化してしまうため、横隔膜に大きな負担がかかります。

いびきをかいている人は、効率の悪い息をしているようなもので、運動負荷が非常に高いのです。

本来疲労を回復させるべき睡眠中にそれができず、むしろ呼吸が乱れることで、心拍数を上げ、血圧を上げて脳への血流を維持しようと自律神経が奮闘します。

その結果、疲労につながっていることが問題なのです。

いびきは、睡眠時無呼吸症候群の症状の一つであり、 睡眠時無呼吸症候群の状態が続くと高血圧や心疾患といった生活習慣病につながる恐れもあります。

これが疲れの原因になっているのは間違いなさそうです。

呼吸を司る自律神経の疲れを引き起こす要因の一つに、いびきがあったといえます。

エネルギー代謝の面から考えると、基礎代謝に対する運動自体のエネルギー消費は少ないです。

1日に何回も行われる呼吸の影響は、エネルギー代謝の面から考えても無視できないですね。

また、エネルギー代謝の面からは消化を行うことでで消費されるエネルギーも相当の大きさです。

まとめ

いかがでしたか?

疲労は脳感じている、ということがお分かりいただけたでしょうか?

またそのサインを無視してはいけないということも。

自律神経に過剰な負荷をかけない工夫が必要ですね。

人間はとても精巧に創られています。

精巧に作られたあなた自身が発する重要なアラームをしっかりと受け止めましょう。

また、今までの「疲れる」自分の使い方から疲れない使い方へのバージョンアップが必要ですね。

そのための工夫も改めて書かせていただきます。

 

 

 

 

 

 

 

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