変形性関節症とは何が原因の病気で、年齢は何歳くらいからなりやすいでしょうか?

生命は神秘的な存在ですが、生物は構造的には機械的な部分が多くあります。

長い年月の使用で、機械的に消耗していく性質を持っています。

生命の神秘について語れるようになりたいものですが、今回は機械的な事について書きます。

成人の骨の数は206個です。

これらの骨が作る連結が関節です。

関節の数はー数え方にも種類がありますがー260関節あります。

関節は動くためにありますが、動くことで骨と骨の接触面には様々なストレスが加わります。

加わるストレスを緩和して、滑らかに動く仕組みがそれぞれの関節に備わっています。

これらの仕組みの破綻の一つに変形性関節症があります。

変形性関節症とは?その原因は?

変形性関節症についてお話しする前に、「関節」について簡単にまとめておきましょう。

関節をつくる両骨の相対する面は軟骨の薄い層(関節軟骨)で覆われていてとても滑らかです。

関節の周囲骨膜の続きの関節包または関節嚢)で包まれていて、その内側に腔を作り関節腔と呼ばれます。

関節包の内面には、滑膜という薄層があって滑液という潤滑液を出しています。

滑液は軟骨を栄養し、摩擦を低減することで関節運動を滑らかにしています。

関節の外には関節の構造と運動時の安定性を補強する靭帯(じんたい)があります。

関節をつくる骨の一方は肥大して関節頭となっていて、他はこれを受ける関節窩(か)を作っていることが多いです。

関節には関節頭または関節面の形により、球関節、楕円関節、鞍関節、蝶番関節、車軸関節、平面関節などがあります。

また関節での運動の回転軸数により、1軸性、2軸性、多軸性などを区別することができます。

関節の形をしていてもほとんど動かない半関節と呼ばれるものもあります。

さてこのような特徴的な構造を持っているのが関節です。

変形性関節症とは、これらの構造を成す組織に慢性の炎症(関節炎)を伴う病気です。

関節の構成要素の退行性の変性により、軟骨の破壊と骨、軟骨の増殖性の変化をする病気です。

退行性の変性とは、組織の形が変化して、その働きが低下することです。

ほとんどの場合、加齢や繰り返し動作による疲労が原因として関係しています。

つまり、関節構成要素の退行変性(年齢による変化)を基盤として遺伝的要因、加令、肥満、関節不安性症、労働、スポーツなどによる関節への負荷等がその進行に関与しています。

関節炎(滑膜炎)は上記の変化によって二次的(続発性)に起こります。

 

変形性関節症には体質的な背景があることが知られていました。

疫学調査などから、遺伝的な因子と環境因子の相互作用で発病することが明らかとなっています。

遺伝子多型を用いた相関解析により、いくつかの感受性遺伝子が明らかにされています。

年齢とともに増加して、60才以上になると膝、肘、股関節および脊椎では、80%以上の人に程度の差はあるものの見られます。

変形性関節症は45才以下では男性に多く、55才以上では女性に多いようです。

65才以上では男性で58%、女性で68%と女性が多くなります。

別の疫学調査では、女性は男性に比べ特に高齢者で1.5〜2倍の有病率です。

女性の60歳代で40%,70歳代で60%,80歳代で80%と年齢とともに増加しています。

また、女性で高体重(62kg超)は低体重(55kg未満)に対し約4倍であることがわかりました。

以上のように、遺伝要因と環境因子の相互作用による生活習慣病であることがわかっています。

また、糖尿病などと同様に発症前にすでに病変が進行していることも明らかになっています。

どの関節に多いか?

これまで述べたように、変形性関節症では関節軟骨の摩耗と変性が起こります。

これに続き関節辺縁や軟骨下骨における骨の増殖性変化(骨棘の形成)が起こり、二次的な滑膜炎を伴います。

関節痛や関節液の過剰分泌、関節の動く範囲の制限、関節の変形等の症状が認められます。

これらはどの関節に起こる変形性関節症にも共通のものです。

しかし全ての関節で変形性関節症が起こるわけではありません。

変形性関節症になりやすい関節があります。

膝関節及び股関節などの下肢の体重を支える関節、使用頻度の多い手指関節、常に体重を支えている脊椎が好発部位です。

それぞれの関節は、もともと持っている関節の構造や役割が異なるので、それぞれに特徴もあります。

好発部位別の記事は別に掲載します。

どのような症状があって、治療はどのように行われるか?

初期には痛みは関節を使いすぎた後に生じ、安静でおさまります。

進行すると軽い運動や安静時にも痛みを来たし、夜間痛もよく見られます。

関節を強く曲げ伸ばしたり、運動時コツコツ音がしたり、関節炎で関節が腫れ、水がたまります

膝や股関節の変形性関節症は末期には体重がかかると強い痛みのため歩行が困難となります。

特に、膝では正座は困難で関節の動揺性が進行すると、歩く時上体が左右に揺れ脚を引きずって歩きます。

股関節では、股が開きにくくなったり、靴下や爪切り動作など日常動作が困難となることがあります。

また、乗り物への乗降、階段の昇降が困難となることがあります。

さらに進行すると、痛みは安静にしていても常時見られるようになり、睡眠も妨げられる場合もあります

初期には、抗炎症薬や痛み止めの薬を服用したり、痛み止めの入った湿布剤やテープなどを塗ったりするとおさまります。

関節への負担を軽減するために、運動により筋力を強化したり、装具をつけることも有効です。

杖の使用も関節への負担が減り有効です。

関節内ヒアルロン酸など関節保護剤の注入が効果的な場合もあります。

さらに進行した場合、関節鏡視下手術が有効なケースもあります。

痛みや変形が強い場合、膝や股関節では骨切り術や人工関節などの手術の適応となります。

(これらの治療法は一般的な例です。治療は個々の状態に合わせて、専門機関の指導を受けてください。)

生活習慣病としての変形性関節症

平成13年国民生活基礎調査によると、要介護の原因の10.4%は関節疾患で,認知症(10.7%)と同程度に高率なのです。

関節障害のなかで特に多いのが変形性関節症なのです。

ロコモティブシンドローム(ロコモ)」という言葉をご存知でしょうか?

この言葉は、日本整形外科学会が2007年(平成19年)に新たに提唱したものです。

ロコモティブ シンドローム(locomotive syndrome)とは、運動器症候群です。

「運動器の障害」により「要介護になる」リスクの高い状態になることを表しています。

「運動器の障害」の原因には、大きく分けて、「運動器自体の疾患」と、「加齢による運動器機能不全」があります。

1:運動器自体の疾患

加齢に伴う、様々な運動器疾患。

たとえば変形性関節症、骨粗鬆症に伴う円背、易骨折性、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症などの疾患。

痛み、関節可動域制限、筋力低下、麻痺、骨折、痙性などにより、バランス能力、体力、移動能力の低下をきたします。

2:加齢による運動器機能不全

加齢により、身体機能は衰えます。

筋力低下、持久力低下、反応時間延長、運動速度の低下、巧緻性低下、深部感覚低下、バランス能力低下などがあげられます。

閉じこもりなどで運動不足になると、筋力やバランス能力の低下や運動機能の低下が起こり、容易に転倒しやすくなります。

変形性関節症はロコモを起こす代表的な疾患です。

まとめ

変形性関節症は、遺伝因子と環境因子の相互作用によって起こる疾患です。

変形性関節症は進行するとロコモの原因となり、日常生活に支障をきたし、QOL(生活の質)を低下させます。

何よりも予防が大切ですが、痛みや違和感を放置せずに、発症した後は早期の適切な対応が必要です。

 

「痛み」ついてはこちらを参考にしてください。  「痛み」とは何か? なぜ痛みはあるのか?

「腰痛」についてはこちらが参考になります。  腰痛を起こす原因になることと腰痛の種類について知っていますか?

 

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でスタジオーまるじんをフォローしよう!