あなたはこれまでに腰痛を経験したことがありますか?
答えが「いいえ」ならば、かなり貴重な存在です。
ここから先は読む必要はないかもしれません。
でも今後の参考にはなるかもしれませんよ。
「はい」の方は、是非読んでみてください。
なお痛み一般の知識整理にはこちらを参考にしてください。
また腰痛の原因と種類そして治療方法の選択についての対策については以下も参考になると思います。
腰痛を起こす原因になることと腰痛の種類について知っていますか?
腰痛の原因となる基本的な事を知った上で治療選択の対策をしましょう
痛いのに「異常ありません」ってどういうこと?
腰痛に限らず、痛くて困っているから病院に行ったのに、「異常ありません」と言われたことはありませんか?
「えっ?」と思いますよね。
「痛いのはどこか悪いからじゃないの?」と思います。
「異常なし」、この表現は正確ではありません。
代わりに正確に表現すると、「現在の医学では、あなたの痛みの原因を突き止めることはできませんでした。」あるいは「正確に説明する手段を持っていません。」
のようになると思います。
原因のわからない痛みは多いのです。
腰痛も同じです。
原因がわからないのになぜか薬だけは出たりして。
痛み止めの薬とか湿布薬とかですね。
でも結果だけあって、原因のないものなんてないのです。
「分からない」から対症療法的な薬が出されます。
なんと言っても、医も商売ですから。
決して対症療法の薬は無意味がないということではありません。
痛みが持続すれば、その苦痛により別の苦痛の元や新たな苦痛が作り出されてしまいますから。
しかし、痛みを止める薬は、痛みの原因そのものを消しているわけではないことを知っておくことが大切です。
痛みの原因が消えたということと、痛みを感じないというのは全く別のことです。
なぜいつまでも痛いのか?
原因がはっきりしている腰痛と違い、原因がはっきりしない腰痛は 長引いて慢性化します。
この慢性化している腰痛は、脳が関係していることがわかってきています。
脳生理学の権威、バニア・アプカリアン(A. Vania Apkarian)教授の研究成果の要旨は以下に示す内容です。
慢性腰痛の患者は健康な人に比べ、脳の前頭葉の灰白質の一部の体積が減少していたことが明らかになっています。
(灰白質は神経細胞が密集するところで、前頭葉の一部は痛みや情動(つらい、楽しい、悲しいなどの気分)にも関わる部分です。)
この研究結果では、
腰痛が起きていない時に実験的に外から腰痛を与えると、脊髄を通ってきた痛みの信号は脳の視床を経由して脳全体に広がる。
一方、慢性化した激しい腰痛のときは、視床は働いていない。
ストレスや不安を感じた時に強く活動する前頭葉だけ活動している。
慢性化した激しい腰痛は、外から与えた腰痛とは、別のメカニズムで感じている。
腰から来るわずかな痛みの信号が感情を司る前頭葉を刺激し、激しい痛みとして感じてしまうのではないか。
慢性腰痛の患者は、痛みの感情的な反応をコントロールできなくなってしまっている。
痛みの記憶が増幅され、長く持続するようになってしまっているのではないか。
ということが述べられています。
脳の中で何が起こっているのか
あなたはも楽しかったり夢中になったりしているときは痛みを感じないのに、嫌なことや不安があると痛くなるという経験をしたことがあると思います。
人間は感情に支配されていますね。
慢性腰痛の人は、痛みへの恐怖心などから、マイナスに考えてしまうクセがあり、痛みが長引いてしまうようです。
日本の研究者の中には、次のように考えているグループもあります。
通常、脳が痛みを感じるとドーパミンが分泌され、脳内モルヒネが増えます。
ところが、過剰なストレスがかかったり、不安な状態が続いたりすると、ドーパミンから脳内モルヒネに至る回路が狂い、痛みを抑える機能が弱まってしまう。
慢性腰痛の方の脳では、そういう機能の低下が起こっていて、痛みに対して敏感になり、強く感じ取ってしまうのかもしれない。
ということです。
そしてその状態を強化するのが、考え方や行動のクセです。
つまりその人が作り上げてきた習慣です。
習慣は私たちにとって頼もしい助っ人にもなれば、とことん足を引っ張る存在にもなります。
行動の習慣により腰をかばう。
考え方の習慣として安静でいる。
安静は急性の痛みでは必要です。
でも慢性化してしまった腰痛では、適度に体を動かした方が良いのです。
安静を続けると体感や下肢の筋力が低下し、血流も悪くなるので腰痛を悪化させる原因になります。
また、運動そのものが脳を刺激し、痛みを抑える機能を改善させることもわかってきています。
そうです、こうした習慣を修正すれば脳の機能が戻り、痛みへ過敏に反応する状態から脱却して、慢性腰痛を克服できる可能性が開かれます。
恐怖—回避モデル
回復に向かわずに増悪したり、持続してしまう原因として、恐怖—回避モデルが考えられています。
これは30年以上前に提唱された考え方です。
痛みを体験したときに、悲観的・消極的に考えてしまったり、破滅的思考になってしまうことが問題となります。
痛みに対して注意がとらわれることや無力感 、そして痛みの脅威を過大に評価してしまいます。
そして、「もっと腰痛が悪化するのではないか」とか「このまま治らないのではないか」などと悲観的・消極的に考えてしまいます。
このような破滅的思考が、痛みに対する不安を助長して、痛みが増悪、慢性化してしまうのです。
不安や動くことへの恐怖から腰を必要以上に過保護にしてしまいます。
この恐怖—回避モデルが繰り返されることで、脳機能の不具合も生じて鬱傾向になり、慢性的な腰痛から抜け出せなくなります。
思い込み
欧米では、テレビやラジオなどのメディアを介して、腰痛に対する正しい知識の啓蒙を行っています。
オーストラリアは、1997~98年にかけて「Back Pain:Don’t Take It Lying Down(腰痛は横になるな)」というキャンペーンを行っています。
また、イギリスのスコットランドでも、2000~03年にかけて「Working Backs Scotland」というキャンペーンを行いっています。
さらにノルウェーでも2002~05年、テレビとラジオ、さらには映画館のコマーシャルで腰痛のキャンペーンを行いました。
出されたメッセージはいずれも同じようなものです。
#腰痛は深刻なケガではありません。
#普段の活動を続け、必要以上に安静を取らないで、可能であれば運動や仕事を続けてください。
#腰痛に対して前向きな気持ちをもつことが重要です。
#腰痛に対して自分でできることはたくさんあります。
#腰痛の予後は大抵の場合が良好です。
#画像所見は、あてにならないことがある。
#腰痛は危険じゃない。
#手術は滅多に必要ない。
これらのキャンペーンでは、権威のある医師や芸能人らによってメッセージが流されました。
その結果、腰痛には安静、休職が必要という時代遅れな考え方からの変化が見られました。
さらには傷害保険請求の減少といった効果まで現れたとのことです。
腰痛持ちであっても安静重視でなく、活動的に過ごすことが推奨されるようになって久しいのですが、安静、休職が必要という考え方が根強かったのです。
その思い込みを変えることによって、考え方や行動に変化が生まれたのです。
悪習慣の打破です。
外側から殻を破ってもらわなければならないほどに強い悪習慣です。
腰痛以外にもこのようなことは思いあたりますね。
まとめ
なかなか治らない慢性化した腰痛は、自分自身が負の連鎖を作り出しているかもしれまん。
このようなことに理解を示してくれる専門機関に相談することが何よりも大切です。
また、キャンペーンで考え方を変えた人々のように自分の内面の変化を作り出すことも必要ですね。
自分の体のことを他人任せにせずに、大事にしたいですね。
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