腰痛と言っても状態も原因も様々で、これらを一つの言葉で表現することがそもそも間違いなんじゃないかと思うほどだ。
ものすごく重たいものを持ち上げた瞬間に一気にくるものもあれば、ボールペンを拾ったその瞬間に動けなくなったり。
椅子に腰掛けたままでちょっと手を伸ばした時に「あれっ?」となったり。
わずかな違和感から始まり、違和感の主張が少しずつ強くなり無視できないほどになったり。
いつもは何ともないのに、ある時間帯や環境におかれると痛み出したり。
一体これは本当に「腰痛」と一括りにしていいものなのか?
腰痛の定義
とは言うもののみんなで何かを考える時には、話している先のものが同じだと言う前提がないと困りますので定義が必要ですね。
では、調査をするために以下のように定義しています。
しかしこれは調査のためのものようで、確立したものはないようなのです。
一般的には、痛みの場所、症状が始まってからの期間、原因などによって一応定義づけられているようです。
痛みの場所:触ることのできる肋骨の最下端から殿溝の間の領域に位置する疼痛。(殿溝とは殿部と大腿との間を水平に走る溝)
つまりお尻全体も腰痛の部位として含めます、と言うことです。
症状が始まってからの期間(有症期間と言います)
急性ー発症から4週間未満のもの
亜急性ー4週間以上3ヶ月未満のもの
慢性ー3ヶ月以上のもの
原因:原因がはっきりしているものとはっきりしていないものに分けられています。
原因がはっきりしているものを特異的腰痛といい。
原因がはっきりしていないものを非特異的腰痛と言います。
さらに原因別の種類では、脊椎由来、神経由来、内臓由来、血管由来、心因性の5つに大別されています。
各々病名として挙げられているのは、
脊椎由来では、腰部椎間板ヘルニア・腰部脊柱管狭窄症・脊柱変形など
神経由来では、脊髄腫瘍など
こんなにあると一体自分はどれ?と思ってしまいますね。
一つではなくて、組み合わされていることもあるようです。
何故こんなに数が多いの
ここで数と言ったのは原因の数もさることながら、腰痛で悩んでいる人の数です。
40 歳以上の約 2,800 万人が腰痛を患っていて、男性では常に第1位、女性は肩こりに次ぐ第2位であることが多いようです。
なぜここまで腰痛に悩む人が多いのでしょうか?
今のところ、脊椎の構造に理由があると考えられています。
脊椎とは脊柱を構成する一つ一つの骨です。
背骨ですね。
首にあるものを頚椎(7個)、胸にあるものを胸椎(12個)、腰を腰椎(5個)、骨盤を構成しているものを仙椎(仙骨として一つになっている)と言います。
一つ一つの骨はそれぞれ特徴的な形をしています。
その形が機能にも現れています。
これらの各椎骨の間に椎間板という柔らかい組織があってクッションの役目を果たしています。
このような構造は脊椎動物共通ですが、人間だけが二足歩行をしています。
そのため、上半身の重量を支えるという役割が増えました。
さらに生活環境や生活習慣の変化などにより腰にかかる負担は増えました。
特に椅子に座る習慣とその姿勢を長時間取ることの環境変化は腰痛の原因となっています。
さて先ほど定義のところで、発症してからの期間による分類を示しました。
しかし慢性腰痛に関する研究が進むにつれて,「腰痛」が腰部の器質的異常や機能のみの問題ではないことがわかってきました。
精神医学的要因,心理・社会的要因が複雑に関与して,痛みを増悪させ,遷延させていることが明らかとなってきました。
「急性」、「慢性」を単純に症状の持続期間で明確に分類することは困難になってきました。
腰痛発生の危険因子・職業性腰痛
それではどのような人が腰痛になりやすいのでしょうか?
これまでに様々な検討されていて,年齢,肥満,喫煙,女性であること,腰椎の脊椎症性変化があることなどが挙げられてきました。
また,低学歴は腰痛発症の危険因子とされ,義務教育のみ修了した者は大卒の 5 倍腰痛が発生しやすいと報告があります。
低所得者の腰痛発生頻度は高所得者の 4 倍であるとの報告もされています。
職業による腰痛の発生についてはどうでしょうか。
職業性腰痛とは業務に起因して生じる腰痛です。
突発的な誘因を伴う災害性腰痛と、重量物を扱うなどの慢性的な疲労蓄積を誘因とする非災害性腰痛に分類されます。
職業性腰痛の危険因子として、1)作業要因、2)環境要因、 3)心理・社会的要因、4)個人的要因があげられています。
仕事への適合性、仕事への満足度、勤務体制といった職業性ストレスに関連する要素の有無によって、腰痛が慢性化する危険度が高い値を示す傾向があるという報告もされています。
過去に腰痛の既往をもつものが半数以上を占めていて、看護職、運輸職、近年では介護職で腰痛を発症するケースが多いようです。
職業性腰痛の危険因子のそれぞれについて例を挙げておきます。
1)作業要因は、重たいものの運搬や挙上・同一姿勢の長時間の拘束的な保持・土木農業作業など。
2)環境要因は、車両運転・寒冷保冷地での作業・狭小空間での作業・緊張持続の作業
3)心理・社会的要因は、不満足な職業や職種・職場の不和や不協調など。
4)個人的要因は、加齢現象・筋力や肥満・関節柔軟性・生活状況や習慣
以上のように、腰痛になりやすい人の特徴や腰痛を起こしやすい職業上の性質や環境があるようです。
年齢
日本はこれまでに類を見ないような超高齢者社会になってきています。
腰痛は高齢者で非常に多く、腰痛を訴える人の割合は、60 歳代では男女ともに約 25%です。
その後高齢になるほど上昇することが報告されていて、 特に女性で は70 歳以上の有訴率は約 35%にもなります。
加齢と共に進行する、変形性脊椎症や腰部脊柱管狭窄症、圧迫骨折を生じうる骨粗鬆症は、高齢者において腰痛をきたす主な疾患です。
最も多い原因疾患は変形性脊椎症で全体の約 36%を占めていて、高齢者において男性約 80%、女性約 65%と高い有病率が報告されています。
高齢者に40%以上の高い有病率が報告されている腰部脊柱管狭窄症患者での検討では、何と約90%の人に腰痛があったという報告がされています。
危険な腰痛
さて「腰痛」と一括りにして良いのだろうか?
と思えるほどに多岐にわたります。
先ほど定義の中で原因別の種類を挙げた中で、いくつかは危険な原因をもつ腰痛です。
以下のような特徴があるときは、すぐに医療機関を受診して適切な対処をすることが大切です。
じっとしていても痛みが引かないのは、内臓や血管の病気の疑いがあるので詳しい検査が必要です。
特に突然、背中から腰にかけて激しい痛みが起こって、からだを動かさないのに強く痛む時には大動脈瘤の可能性があります。
足のしびれや麻痺、尿・便の失禁などを伴うのは、脊椎の中の神経が強く障害されていることを示す症状です。
治療のタイミングを逃すと治療後の神経の回復が悪く、後遺症が残ってしまう可能性があります。
腰痛に体温の上昇を伴う場合、脊椎への細菌感染が考えられ、 専門的な検査・治療が必要となる場合があります。
痛みが徐々にひどくなるのは、がんなど進行性の病気や別の病気が併発した可能性があります。
これらの特徴のあるケースでは、腰痛を侮らずに医療機関を受診することが大事です。
まとめ
腰痛の原因と種類についてまとめてみました。
その原因となることは非常に広範囲で、慢性的に長く繰り返すものから緊急の対処が必要になるものまで様々です。
なるべく早く専門家に相談し、適切な対応をすることが大切ですね。
痛みはどこにあっても辛いものです。
痛みは生活や仕事の質を高く良いものに保つことを阻害します。
信頼できる専門家に相談しましょう。
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