私たちは生きて活動するために、エネルギーを必要とします。
そのエネルギーはおもに食べたものから摂り入れています。
人間は、口から肛門に至る長い管を体の内側に持っています。
この管の中を食べ物が進行していく過程で、消化が行われて必要な栄養素が体内に取り込まれます。
体が必要としなかったもの、消化できなかったもの、腸内の細菌(生きているものも死んでいるものも)などが、最終的に便となって体外に排泄されます。
また消化の過程で生じたガスも一部が便と同様に排泄されます。
便は私たちの内側の管を通ってきた最終産物なので、内側の情報を多く持っています。
食べ物に気を配るのと同じくらい、便にも注意を向けるべき大切なものです。
「大きな便り」に耳を傾けて、食生活に活かしましょう。
大便(大きな便り)について
大便には悪玉菌が分泌する有害物質が数多く含まれ、腐敗臭を発するので、きれいなものとは言えません。
しかし腸内細菌の9割以上が善玉菌(ビフィズス菌)によって構成されている赤ちゃんの便は、全く臭くありません。
成人してからは、他の菌も繁殖して、ビフィズス菌の割合は2割程度になります。
そうした便でも酸味臭の方が強いものの、嫌な匂いはしないようです。
腸内細菌は、食べ物の消化を助けたり、ビタミンを合成するなどして、人間とは共生関係です。
腸内細菌が多くを占める便についても、害があるもの・汚いものという捉え方だけでは一面的です。
人が健康で長生きするために必要な様々な情報が便には詰まっています。
例えば、健康な人ほど便の量が多いのです。
便の量が多いという事は、菌の数が多いことを意味します。
また、食物繊維の摂取量が多いこともわかります。
腸内フローラ(腸内細菌叢)のバランスが整っているのでしょう。
便の量が多い=腸内フローラが安定している=健康レベルが高いと考えて良いでしょう。
日本人の平均的な排便量は、1日あたりで125〜180グラム程度(バナナ1〜2本弱)と考えられていますが、食物繊維の多い野菜類などの摂取を増やすと、200〜300グラム(バナナ2〜3本分)まで増えていきます。
パプアニューギニアの高地民族(パブァ族)のように、1日に1キロもの排便がある人たちもいます。
便は健康レベルをチェックするバロメーターになると考えられます。
健康的な腸内細菌のバランスは、善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7と言われています。
便の量
便の量は1日200〜300グラム(バナナ2〜3本分)が目安。
多い少ないは、食べものによって違います。
水分をたくさん吸収するもの、例えば野菜の煮物やジャガイモを食べると、大きくて重たい便が出ます。
また、腸内の細菌の状態によっても量は変わります。
便の形と硬さ
ほどよい柔らかさのバナナ状の形が快便です。
水分量では70〜80%ほどで、これよりも少ないと便秘の人に多いコロコロ状、カチカチ状の便になります。
また多いと半練状の軟便、泥状・水状の下痢になります。
便の色と匂い
臭い成分は、腸内細菌が出す排泄物により、その日の食事や健康状態によって変わります。
肉食メインだと硫化水素などの腐敗臭が強く、また甘いものに偏っていると、腸内の発酵作用で酸っぱい臭いが混じってきます。
ビフィズス菌が9割以上を占める赤ちゃんの便は黄色に近く、年齢を重ねると茶色から黒っぽい便に変化していく傾向があるようです。
成人の場合、腸内フローラを整えることに留意して、黄土色の便を維持することを心がけたいですね。
pH(ペーハー)で言うと、赤ちゃんの黄色い便は4.5〜5.5の酸性のレベルです。
6.5を超えると茶色に、7以上になるとアルカリ性の黒い便に変わります。
pHがアルカリ性に傾かない、5.5〜6.5が大人の健康な便にあたり、善玉菌の働きも十分に維持できます。
アルカリ性に傾かなければ悪玉菌の増殖が抑えられ、腸内腐敗も進行しませんから匂いも強くはないでしょう。
便だからといって必ず臭いわけではありません。
健康な赤ちゃんの便は酸味臭の方が強く、嫌な匂いをしないものです。
便の匂いがひどいのは腸内腐敗が進んでいる証拠だと捉え、食生活の見直しをするなど、腸内フローラの改善に努めるべきです。
ある禅寺のお坊さんの便は、黄色い赤ちゃんの便に近く、茶色や黒色の便は全く見られなかったそうです。
食生活では、豆腐や野菜などの精進料理を食べているから腸内環境が良いのでしょう。
排便習慣
1日1回、できれば朝起きたところでお通じがあることが理想です。
一般的に、食生活の乱れやストレスなどで朝の蠕動が鈍ると、食べた物の消化に時間がかかるため、便の水分が失われていき、次第に硬く、コロコロ、カチカチに変わっていきます。
そうした便は思うように排泄できないため、便秘と呼ばれる状態が続いてしまうのです。
本来、便秘は病気に分類されるものではありませんから、1〜2日お通じが滞ったとしても、あまり神経質になる必要はありません。
生活習慣が乱れているサインと理解し、食べ物を見直すなど、早めの対処をすれば排便習慣は安定していきます。
しかし、放置しておくと慢性化し、腸内が腐敗の方向に進んでいきます。
その結果、悪玉菌から分泌された様々な有害物質が血液中に吸収され、全身の細胞へと運ばれていくことで、肌荒れや老化の引き金になります。
また、善玉菌の割合が減ることで腸の免疫力も低下するため、アレルギーや感染症のリスクも高まります。
最近大変増えている大腸がんの要因として戦後の食生活の欧米化に関与している事は十分に考えられます。
具体的には、肉類や精製した穀類を取る機会が増え、腸内腐敗が促されたのでしょう。
認知症やアルツハイマー病と便秘の関係も無視できないようです。
アルツハイマー病の患者さんの腸内フローラを調べると、健常者の腸内フローラと比べて、悪玉菌(ウェルシュ菌)件数が顕著に高い傾向があったようです。
排便姿勢
現在は洋式便器が主流となっていて、和式便器は古い建物以外ではあまり見かけなくなりました。
和式便器にしゃがんでするあの格好が、理想的な排便姿勢です。
直腸の角度が便を排泄するのにちょうど良い角度になるのです。
ところが、洋式便器では普通の椅子に腰掛けるようにしてしまうので、角度がついてしまい排便しにくくなってしまいます。
ロダンの「考える人」のあの姿勢を取りましょう。
踵をあげるとなおいいです。
息み方
息み方にも正しい息み方があります。
喉を絞めずに、きちんと腹圧をかけて息みます。
できない人は、喉を絞めて、本来お腹の仕事を喉にさせて顔を真っ赤にします。
血圧も相当に上がっていることでしょう。
排尿は力が緩めば自然に出ますが、排便は力を加える必要があります。
正しい息み方で、血管への負担を減らしましょう。
腸と切っても切れない関係にあるおならについて
おならは腸内で発生し、肛門から放出されるガスを指し、その量は1日平均で100〜300ミリリットルに及びます。
こうしたガスは、基本的には食べ物のカスが腸内細菌によって分解される過程で発生し、その多くは血液中に吸収されます。
そして、血液によって肺まで運ばれ、呼気として体外に排泄されます。
しかし、腸内のガスの量が多いと血液中に吸収しきれないため、そのまま肛門からおならとして放出されることになるのです。
便と同様におならの全てが臭いわけではありません。
臭いおならが出るのは、腸内フローラが悪玉菌優勢になっている証拠です。
おならがどれだけ臭いかは、その人の腸の健康状態に左右されるわけです。
腸内細菌との関わりでは、ビフィズス菌、乳酸桿菌、腸球菌など善玉菌に分類できる菌たちは、運ばれてきた食べ物を分解してもガスは発生させず、悪臭を生み出すことはありません。
腸内フローラが善玉菌優勢になれば、おならも便も臭くなくなり、過度に出ることもなくなります。
まとめ
「大きな便り」に耳を傾けてみる気になってもらえたでしょうか?
さてもう一度おさらいすると、
便の量は、1日200〜300グラム(バナナ2〜3本分)。
便の形と硬さは、便の色と匂いは、pHがアルカリ性に傾かない5.5〜6.5で、色は黄土色で腐敗臭がしないのが大人の健康な便です。
排便習慣は、1日1回、朝起きたところでお通じがあるのが理想です。
排便姿勢は、ロダンの「考える人」のあの姿勢を取りましょう。
息み方は、正しくできていれば、顔が赤くなったり、クラクラしたりしません。
おならも大便と同じで、腸内環境が良ければ悪臭はしません。
腸内環境と疲労については、こちらが参考になります。
体質改善と食べ物については、こちらが参考になります。
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