腰痛は様々な原因で起こるので、原因を一つに絞ることが難しいことがあります。
痛みを感じる場所に原因があると普通は思いますよね。
もちろん腰あるいは腰の周りに腰痛の原因がはっきり確認できる場合もあります。
しかしそれ以外の腰痛の方が実は多く、非特異的腰痛と言います。
今回は腰痛と精神的ストレスの関係についてお話しします。
「ストレス」について言葉の整理をしておきましょう
ストレスという用語は、もともと物理学の分野で使われていたもので、物体の外側から掛けられた圧力によって歪みが生じた状態を言います。
ストレスを風船にたとえてみると、風船を指で押さえる力をストレッサーと言い、ストレッサーによって風船が歪んだ状態をストレス反応と言います。
医学や心理学の領域では、こころや体にかかる外部からの刺激をストレッサーと言い、これらに適応しようとして、心や体に生じたさまざまな反応をストレス反応と言います。
私たちのこころや体に影響を及ぼすストレッサーには、
「物理的ストレッサー」(暑さや寒さ、騒音や混雑など)
「化学的ストレッサー」(公害物質、薬物、酸素欠乏・過剰、一酸化炭素など)
「心理・社会的ストレッサー」(人間関係や仕事上の問題、家庭の問題など)
があります。
普段私たちが「ストレス」と言っているものの多くは、この「心理・社会的ストレッサー」のことを指しています。
職場には仕事の量や質、対人関係をはじめ、さまざまな要因がストレッサーとなりうることが分かっています。
ストレッサーによって引き起こされるストレス反応は、心理面、身体面、行動面の3つに分けることができます。
心理面でのストレス反応には、活気の低下、イライラ、不安、抑うつ(気分の落ち込み,興味・関心の低下)などがあります。
身体面でのストレス反応には、体のふしぶしの痛み頭痛、肩こり、腰痛、目の疲れ、動悸や息切れ、胃痛、食欲低下、便秘や下痢、不眠などさまざまな症状があります。
また、行動面でのストレス反応には、飲酒量や喫煙量の増加、仕事でのミスや事故、ヒヤリハットの増加などがあります。
これらのストレス反応が長く続く場合には、過剰なストレス状態に陥っているサインかもしれません。
「働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト『こころの耳』」より一部改変して引用
ストレスの現状
厚生労働省が5年に1回行っている「労働者健康状況調査」によれば、「仕事や職業生活でストレスを感じている」労働者の割合は、50.6%(1982年)から60.9%(2012年)と推移し、30年間で約10%増加してします。
今や働く人の約6割はストレスを感じながら仕事をしていると言えます。
この割合を年代別に見てみると(2012年の調査結果)、30歳代〜50歳代のいわゆる働き盛り世代のストレスが高く、男女ともに共通しています。
ストレスの内容を具体的に見ると(2012年の調査結果)、人間関係(41.3%)が最も多く、仕事の質(33.1%)、仕事の量(30.3%)となっています。
男女別に見ると、男性では人間関係(35.2%)が最も多く、仕事の質(34.9%)、仕事の量(33.0%)と続きます。
女性では人間関係(48.6%)でストレスを自覚している人が約半数を占め、続いて仕事の質(30.9%)、仕事の量(27.0%)と続いています。
精神的ストレスと腰痛のつながり
心因性腰痛という言葉をご存知でしょうか?
心因性腰痛とは、心の問題によって腰痛の痛みがひどくなっている状態です。
心が腰痛に関係あるの?
そう思われる方もいらっしゃると思います。
しかし、近年原因不明の腰痛、治りにくい腰痛の背後に心の問題が関わっているケースが多いことが分かってきています。
検査を行っても腰痛を引き起こすような骨の異常や病気が見当たらない。
検査で異常が見つかっても、必ずしも訴えている腰痛の症状と一致しないこともよくあるようです。
原因が不明のまま、3ヶ月以上も続く慢性的な腰痛を訴えるケースが数多くなっています。
そんな原因不明とされてきた慢性腰痛の中に「心因性腰痛」がかなり含まれているようです。
慢性腰痛を訴える患者さんの約80%に抑うつ状態が見られるともいわれ、ストレスや心の問題が腰痛に大きく影響していることが分かっています。
私たちは、絶望感・恐怖・怒り・不安・無力感・抑うつ感などを感じている時、痛みをより感じやすいのです。
また、体が非常に疲れている・眠れない・不快・孤独・運動不足など肉体的な理由のある場合も、通常より痛みを感じやすいようです。
人間関係のストレス、仕事の忙しさ、孤独感、家庭内の不和などの精神的ストレスが腰痛という形で現れることもあります。
このようなことを背景にして、先の厚労省の調査報告につながっています。
原因のメカニズム
慢性腰痛は、私たちが持っている痛みを和らげる仕組みと関係があります。
体から痛みの信号が脳に伝わると、脳からドパミンという神経伝達物質が放出されます。
すると、脳内でμオピオイドという物質が多量に放出されます。
その結果、神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンが放出され、痛みの信号を脳に伝える経路が遮断される、という仕組みです。
この仕組みによって、腰痛などの痛みが気にならなくなったり、我慢ができたりするようになります。
しかし、ストレス、うつ、あるいは不安などを長期間感じていると、脳でドパミンが放出されにくい状態になります。
このために腰痛が長引いたり、わずかな痛みでも強く感じたりするようになります。
ストレスとどう向き合うか
慢性腰痛の問題点は、悪循環が起きやすいということです。
精神的要因の有無をはっきりさせないまま腰痛の治療を繰り返していると、効果が出ないため治療への不満が増して、ストレスや不安が増えるという悪循環が起こります。
このような悪循環から抜け出し、ストレスとどう向き合えば良いでしょうか?
つまりすでに過剰に反応するようになっている脳をいかに鎮静化させるか?
これらが課題になります。
ここではいくつかの提案をしてみます。
ストレスを受けているととにかく何をするのも嫌になってしまいます。
そのため何を提案されても、拒絶してしまします。
「でも〜」「だって〜」と何かと理由をつけて自分の可能性を否定してしまいます。
一つ目の提案=自分の中に閉じこもらずに、動いてみましょう。
じっとしていると頭の中ではグルグル否定的な言葉の回転木馬が回り続けてしまいます。
2つ目の提案=あなたにとってマイナスとなる刺激を排除するのではなくて、あなたにとってプラスとなる刺激を受け入れてみましょう。
何もかも面倒になってあらゆる刺激(プラスもマイナスも)を拒絶してしまいがちです。
マイナスを消そうとするのではなくて、小さなプラスを受け入れて、マイナスの連鎖を少しの時間でも断ち切ることが大切です。
まとめ
腰痛が慢性化することで、脳は痛みを感じやすい状態になってしまうことがあります。
慢性化した腰痛の中にはストレスが原因の心因性腰痛があります。
慢性化した腰痛によって治療への信頼感も失うなどの悪循環が生まれます。
ストレスとどのように向かい合うかが鍵となります。
ストレスを排除するのではなくて、あなたにとってプラスとなることを小さなことから受け入れてみましょう。
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